人海戦術ではカバーしきれない仕事をICTでカバー

2021年のゴールデンウィーク明け、札幌市は市内の飲食店等その他施設に営業時間の短縮要請や、酒類の終日提供自粛などを呼びかけていました。しかし、飲食店をはじめとする店舗や関係者の努力にもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の増加傾向が道内で収まる気配がなく、5月14日には国の緊急事態宣言対象地域に北海道が追加されることとなる事態に。これを受けて翌15日、北海道は特定の業種に休業要請を求めることまで踏み込んだ「緊急事態措置」を発令します。そこで、すでに飲食店の見回りが行われていた札幌市を除く、石狩振興局管内の5市1町1村、これに小樽市、旭川市を加えた約6,500店舗の見回り業務を行うことになりました。ALSOK北海道株式会社が業務を一括受託し、ALSOKが現場見回りを、テルウェル東日本が業務の窓口対応、調査業務見回り結果報告などの実務面を担うという体制で、見回り業務を5月31日の期限まで行いました。

AIよみと〜る

AIよみと〜る

ところが、期限手前の5月28日、9都道府県における適用期間の延長が決まり、改めて、上述の地域に札幌市を加えた約17,400店舗の見回り業務の打診を北海道からいただくことになりました。このとき想定された課題は、店舗数が増えることによる稼働・コストの増加、そして何より、稼働がかかることによる報告処理の遅延発生の懸念です。というのも、見回り店舗のチェックには手書きの確認票が運用されていて、報告書のデータ入力は1件ずつ手入力で行われていました。1日の処理件数を増やすには単純に人員を増やせばいいということでもなく、予算には限りがあります。この課題を解決させたのが「AIよみと〜る」を利用したシステムの構築でした。

AIによって読取精度が向上したOCRサービスをフル活用

「AIよみと〜る」はNTT東日本が提供する、手書き書類や帳票を文字データに変換するOCRサービスです。テルウェル東日本本社のシステム推進室と、NTT東日本 北海道事業部 ビジネスイノベーション部との連携・支援によって「AIよみと〜る」を活用したシステムを構築、見回り業務にかかる集計・報告業務を大幅に見直すことができました。6月からの業務では1日に約3,000件を処理することが可能となり、懸念していた報告処理は、作業精度を向上させながらさらに効率的にスピーディに行えることになりました。

この業務改善のポイントは2つあります。1つは、見回り業務に必要な確認票を、記入しやすい書式フォーマットに見直したこと。5月中に行った作業では、北海道から提供された確認票に対して調査員が見回り対象の店舗情報(管理番号、地域、店舗名、所在地)を記入しなければならず、記載漏れや誤記などのリスク要因となっていました。極力調査員の手書きを減らすため、北海道から示された飲食店リストから確認票へ転記できる項目をあらかじめ自動転記。店舗情報が記入された状態の確認票を調査員へ配布するように業務フローを入れ替えました。また、項目外の手書きを減らすようにチェック項目を増やし、現場で記入しやすいフォーマットに変更しました。こうした改訂は、「AIよみと〜る」での読取精度向上にも役立っています。

もう1つは、1件ごとの確認票を北海道に報告するための一覧表に自動変換できるようにしたことです。5月中の作業では、PDFの確認票を元に手入力でリスト化していました。手書きの書類を手入力で転記する際には、読み違い・打ち間違いといった誤入力リスクがどうしても発生しやすくなります。そこで、このシステムではPDFの文字情報を「AIよみと〜る」で読み取りCSVデータに変換、さらに、CSVから見回り対象の一覧表に変換、と2段階のタスクを自動化しました。転記精度が上がり、確認作業の効率も上がり、結果的に現場確認の件数が増えてもなお、報告書作成までの業務の信頼性を保つことができています。今後も地域のため、さまざまな課題にNTTグループの力を発揮しながら取り組んでいきます。

「AIよみと〜る」読み取り事例

1:二桁折り返し住所の読み取り

1:二桁折り返し住所の読み取り

2:訂正箇所(訂正印、黒丸)の読み飛ばし

2:訂正箇所(訂正印、黒丸)の読み飛ばし